2017 知っておくべき
アメリカ移民法最新事情
- 2017年6月1日
- 2017年6月号掲載
専門職(H1-B)ビザはさらに
狭き門になる?
質問者:H1-B申請予定者
H1-Bビザ取得するには
大学の専攻も事前に考慮を
回答者:Kimura Law Office 木村原弁護士
H1-Bに関して大きな変更というものはありません。法律の内容もそのままです。しかし、法律を元にレビューを行うのは審査官であり、彼らの姿勢がケースによってはネガティブなものになることもあります。例えば、移民局が法律とは別に発行するメモ(注意書き)に対する解釈が審査官によっては異なることがあるのです。
また、以前でしたらかなりの確率で通ったIT系のポジションが、現在はH1-Bで通りにくくなっています。これは外国籍のIT系の大企業がH1-BやLビザの外国人社員を大量に米国に送り込んできたことが、最近になって問題になっているからです。これらの企業はアメリカのIT企業の下請けをやっています。彼らがアメリカで就労することで、アメリカ人の雇用機会を奪っている、という見方が強くなっているのです。下請けと言っても、アメリカにある外国籍企業のオフィスで仕事をするのではなく、クライアントの企業に常駐していることが多く、ビザを発行しているスポンサー企業と就労先の企業がマッチしないということもまた問題になっています。
日系企業に関しては、以前は人材派遣会社がスポンサーしたH1-Bビザでクライアント先の仕事をするといったケースも見られましたが、今ではその形態は困難になっています。
景気回復を受け
H1-B申請者は増加の一途
2016年の数字で、H1-Bビザの枠は大卒で6万5000人分、アメリカの大学院卒以上で2万人分に対して、申請者は23万6000人でした。つまり申請してもビザを手にできるのは3人に1人です。ここ数年は、アメリカの景気が回復傾向にあるため、ビザ申請者は増加し続けています。
本来、H1-Bビザとは特定の専門職に対して、アメリカ人だけでその職務を満たすことは難しいことを立証した上で、外国人の就労で補ってもらうことを目的に発行するビザです。一体、どのような職種がH1-Bのカテゴリーの専門職に認められるかと言いますと、アカウンタント、マーケティングといった仕事です。取得学位で言うと、エンジニアリング、アカウンティング、数学、物理学といった、かなり理系の専攻が有利になってきます。例えば保険会社で専門職ビザをスポンサーしてもらう場合、統計の技術が求められる仕事が多いため、数学を専攻しているとH1-Bの審査が通りやすくなるということが言えます。
そこで、将来、アメリカに残って就職したい留学生の皆さんにアドバイスしたいのは、興味がある分野の学問を修めることはもちろんですが、アメリカに残りたいならそれだけでは十分ではないということです。いかにビザ申請が通りやすい専攻で卒業するかも非常に重要になってきます。ビジネス専攻よりも、アカウンティングやマーケティングの方がチャンスは広がります。特にアカウンタントの需要が高いアメリカでは、アカウンティングを専攻することで日系の会計事務所に限らず米系企業への就職の機会も出てきます。
また、H1-Bビザをスポンサーする企業には、コンプライアンスは以前より非常に厳しくなっていることを意識していただきたいと思います。例えば、当初、アカウンタントとしてH1-Bビザをスポンサーし採用した人が、経験を積んだ後、仕事の内容がマーケティング的なことも含むようになったとしたら、修正事項を移民局に報告する義務があります。さらに移民局の査察も頻繁に行われるようになっています。後で不備が発覚して大事になる前に、多少の費用と手間はかかっても適切に手続きを済ませておくことをお勧めします。
全体的なビザに関連するアドバイスとしては、くれぐれも飲酒運転をしないように気をつけていただきたいということです。飲酒運転1回でどのようなビザでも、またどのような段階でもすべてキャンセルになる傾向にあります。
最後に、移民法弁護士の探し方に関しては、以前にその弁護士に依頼したことがある人からの推薦が一番確実だと思います。口コミが重要です。あとはあまり調子の良いことばかり言う弁護士には要注意です。想定されるリスクも含めて説明してくれる弁護士を雇った方がいいでしょう。
Kimura Law Office
木村原弁護士
(832) 247-6932
http://kimuralaw.blogspot.com
※本記事は一般的な情報を、取材を基にまとめたものです。個別のケースに関しては、専門家に相談することをお勧めします。また取材時期以降に状況が変化する可能性があることもご了承ください。
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