H-1Bビザの審査状況(その2)

文/デビッド・シンデル(Text by David Sindell)

前回に引き続き、H-1Bビザの審査状況について解説します。
皆さんも耳にしていることかと思いますが、新政権のもと、ビザ申請審査が非常に厳しくなってきており、H-1Bビザも例外ではありません。

ここ最近の政府の新方針のもと、レベル1のポジション(特定の地域およびポジションに対する賃金レベルの4段階のうち、レベル1がエントリーレベルポジションに相当)の賃金額に基づいて認証されたLCA(労働局発行の労働認定証)とともに提出したH-1B申請に対し、移民局より質問状が発行される可能性が非常に高くなっています。アメリカ移民法に関わる改革は新政権の掲げる重要改革事項の一つで、H-1Bビザについても、もっとも熟練した高額所得者に対してのみ発行されるべきである、との大統領命令に従い、移民局は、このレベル1の給与額を引き合いに質問状を発行することで、“大統領指令の実行”を遂行する傾向が見受けられます。

移民局は今年4月に受け付けた新規H-1B申請(抽選の対象となったH-1B申請)に対し、確認できただけでも既に数百件以上にも及ぶ関連した質問状の発行をしており、とりわけ、レベル1の労働認定証をもとに作成された申請書が主な質問状発行の対象ケースとなっています。つまり、移民局は本来専門職であるべきH-1Bビザのポジションに対して、エントリーレベルの給与額をオファーすることはH-1Bの条件を満たさない、との見解を示し始めたわけです。

今後は新規H-1Bケースに限らず、H-1B延長申請等に対しても同様の対応が予想されます。例えば3年後の延長申請については、既に3年の経験がある従業員の延長申請を行うこととなり、その申請上のオファー給与額がエントリーレベルのレベル1賃金に基づいているとすれば、その不適格性を指摘される可能性は十分に予想できます。言い換えれば、本来H-1B申請の条件の一つであるポジションに関連した学士号(Bachelor’s)以上の学歴を持っている、という最低条件に加え、3年の職務経験が加わることは、その特定の申請者に対するH-1B申請に対し、エントリーレベルのポジションとしてレベル1の給与をオファーすべきではない、ということを意味することになります。労働局のガイドラインにおいても、学士号に加えて2年以上の職務経験がある場合は、少なくともレベル2の給与をオファーすべきとの指針があります。

これまで移民局は、申請者の経歴やポジションの複雑性、専門性に応じた給与レベル設定について厳しい指摘はなく、2回目、3回目以降のH-1B申請においても、レベル1の給与設定に対し、多くは指摘の対象とはしてきませんでした。しかしながら、今後は、それらのケースに関しても質問状発行の対象となることは推測できます。上述の通り、移民局は予定職務内容とともに労働認定証を注意深く確認し、既に多くのレベル1のケースで非常に困難な質問状を発行する傾向にあります(このような状況のもと、レベル1給与額で認可されているケースはあります)。事態の状況がより深刻なのは、現時点で、関連したこの質問状に対し、回答して認可を受けたという報告が全米弁護士協会から一切の報告が上がってきていないという点です。言い換えれば、レベル1での申請では、現状、質問状に返答しても、最終的には認可が得られない可能性が非常に高くなってきているという状況ともいえます。

今後の政府による対応は注目です。

続きを読む → H-1Bビザの審査状況(その3)

この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

デビッド・シンデル (David Sindell)

デビッド・シンデル (David Sindell)

ライタープロフィール

NY州およびNJ州弁護士資格。外国法事務弁護士(外弁)として東京第2弁護士会所属。アメリカ移民法弁護士協会所属。日本語、フランス語に堪能。

この著者の最新の記事

関連記事

資格の学校TAC
アメリカの移民法・ビザ
アメリカから日本への帰国
アメリカのビジネス
アメリカの人材採用

注目の記事

  1. 偶然出会ったシンクロが人生の糧に シンクロナイズドスイミング(現・アーティスティックスイミング...
  2. 相手の過失で事故に巻き込まれた場合でもご自身の過失で事故を起こしてしまった場合でも、共通した...
  3. 2021年8月9日

    課外活動の重み
    日米の学校や受験システムの違いで実感するのが、生徒の活動への取り組みに対して、日本では短期的...
  4. イリノイ州の南西、ミシシッピ川のすぐそばに位置するカホキア・マウンド州立史跡は、北アメリカ最...
  5. 2021年8月5日

    第81回 街に出ようよ
    1年半のコロナ禍を経て、ようやく以前の人間らしい生活が再開した。この時を待ち望んでいた。屋外...
  6. 老化を引き起こす3つの要因 老化を加速させる3つのキーワードは、“酸化” “糖化” “炎症”。夏は...
  7. 「日本酒の未来をつくる」をビジョンに掲げて2013年に設立された、日本酒事業を行うスタートア...
  8. オンライン上のプライバシーに関する問題は思ったよりも複雑で、デジタルプライバシーを保護するこ...
ページ上部へ戻る