[敬老・売却問題] 敬老4施設、パシフィカ社の手に渡る、売却が正式に完了

文&写真/佐藤美玲(Text and photos by Mirei Sato)

 ロサンゼルスで50年にわたって日系人高齢者のために老人ホームなどを運営してきた非営利団体「敬老シニアヘルスケア」(通称「Keiro」)が、所有する4施設すべてを、不動産業者のパシフィカ社に売却した。

 敬老が、2月8日付で、エスクローが完了し、売却が正式に成立したことを発表する文書を流した。2月4日に、ロサンゼルス郡上級裁判所が、エスクローの一時差し止めを求める反対派の訴えを却下してから、最終の手続きが進んでいた。

「Keiro's Mission Remains the Same」と書かれた、敬老シニアヘルスケアのウェブサイト

「Keiro’s Mission Remains the Same」と書かれた、敬老シニアヘルスケアのウェブサイト

 文書によると、敬老看護ホーム、サウスベイ敬老看護ホーム、敬老中間看護施設、敬老引退者ホームの4つの施設が、パシフィカへ渡った。同時に、パシフィカは、施設の運営と管理を「アスペン・スキルド・ヘルスケア」と「ノーススター・シニア・リビング」にリースした。

 敬老シニアヘルスケアのゲイリー・カワグチ理事長は、文書の中で、以下のようにコメントした。

 「長年にわたる周到な考慮の末、敬老は、我々のコミュニティーへの最善のケアとサービスを補償するために施設を売却することを決断しました。この移行期間中、我々は居住者への継続したケアを最優先に考えてまいりました」

 「我々は、敬老施設の売却が計画通りに進んだことを嬉しく思っています。これに関して対立する強い意見があることは承知していますが、我々の高齢者へのケアの歴史を継続させ、更に発展させるために、コミュニティーと協力し合うことを待ち望みます」

 「施設の売却は、日系、および日本人高齢者にとって最善であると信じています。また、我々は、新たなオーナーと協力して、居住者から高く評価される多くの文化的、および教育プログラムを継続させることによって、居住者、家族、およびボランティアの方々へ継続性を提供していくことを約束します」

ボイルハイツにある敬老の施設の入り口 Photo © Mirei Sato

ボイルハイツにある敬老の施設の入り口
Photo © Mirei Sato

 また、移行の期間中とその後の継続性を保証するために、「コミュニティー諮問委員会」(CAB)を設置したという。居住者、家族、日本人、日系人などのメンバーで構成する。

 これは、売却に対する反対運動が高まったのを受けて、コミュニティーの声を吸収する対策の一つとして、昨年12月まで公募されていた。
 ただし、どのような選考過程で、具体的にだれが選ばれたのか、は明らかになっていない。本誌の取材に対して、敬老からの回答はなかった。

 文書は、カワグチ理事長の次のようなコメントで締めくくられた。

 「コミュニティーのメンバーが、我々はどのように高齢者をケアしていくかという問題に、今後も積極的に議論を続けることを願います。我々のコミュニティーが敬老の持つ意味についてこれほど関心を抱くようになって嬉しく思います。これらの議論は計画と行動を生み出し、それらは我々のコミュニティーの高齢者のニーズをどのように満たすかということに前向きな影響をもたらすでしょう」

敬老・売却問題に関するフロントラインの過去の記事はこちら:

⚫︎2016年2月5日「売却成立へ、ロサンゼルス郡上級裁判所、反対派の訴え退ける」
⚫︎2016年1月24日「ノーマン・ミネタ元運輸長官が反対派支援を表明、日系社会のシンボル」
⚫︎2016年1月16日「反対派が300人集会、非営利団体を結成、司法長官は『対話と交渉』提案も」
⚫︎2015年12月3日「ショーン・ミヤケ・敬老シニアヘルスケアCEOにインタビュー」
⚫︎2015年11月26日「反対派集会に500人、経営陣の辞任要求、政治的駆け引きへ」
⚫︎2015年11月23日「経営陣と反対派、相違広がる、今夜タウンホール集会、連邦議員も出席」
⚫︎2015年11月13日「反対派が11月23日、リトル東京でタウンホール集会を開催」
⚫︎2015年11月10日「新局面! 司法長官『売却撤回せず』、反対派『断固阻止』で11月下旬タウンホール開催へ」
⚫︎2015年11月6日「カリフォルニア選出連邦下院議員16人がハリス州司法長官に陳情書を提出」
⚫︎2015年11月1日「敬老を売るな! 5000人以上の署名集まる」
⚫︎2015年10月26日「反対署名集め、ロサンゼルス日系コミュニティーが運動開始」

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佐藤美玲 (Mirei Sato)

佐藤美玲 (Mirei Sato)

ライタープロフィール

東京生まれ。子供の時に見たTVドラマ「Roots」に感化され、アメリカの黒人問題に対する興味を深める。日本女子大英文学科アメリカ研究卒業。朝日新聞記者を経て、1999年、大学院留学のため渡米。UCLAアメリカ黒人研究学部卒業・修士号。UMass-Amherst、UC-Berkeleyのアメリカ黒人研究学部・博士課程に在籍。黒人史と文化、メディアと人種の問題を研究。2007年からU.S. FrontLine誌編集記者。大統領選を含め、アメリカを深く広く取材する。

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