元祖セレブを描く?!「Pawn Sacrifice」

文/はせがわいずみ(Text by Izumi Hasegawa)

 15歳で史上最年少のチェスのグランドマスターとなったボビー・フィッシャーは、冷戦時代に世界チャンピオンのソ連を下し、アメリカ国民の英雄として時の人となった。しかし、妄想や奇行も激しく、紙袋をかぶってマスコミの前に現れたりするなど、その変人ぶりでも有名だった。

 受像機の普及によりTV報道が急激に活発となった時代に有名人となったフィッシャーは、どこに行ってもマスコミに囲まれる体験をする。それはまるで今の時代、パパラッチだけでなく一般人が携帯カメラでセレブを追うのに似ている。おまけに彼も、現代のセレブ同様、奇行をする。注目を浴びると奇行をするようになるのか? それとも元来の性質なのか? はたまた、プレッシャーからか?

Photo by Takashi Seida  © Bleecker Street

Photo by Takashi Seida © Bleecker Street

 フィッシャーに扮したトビー・マグワイアも、映画「Spider-Man」のヒットで有名人の仲間入りを果たした。有名税と渡り合うコツやフィッシャーとの共通点を聞くと、開口一番「紙袋をかぶらなきゃ」と返ってきた。すでにシャイア・ラブーフがベルリン映画祭でやったことをマグワイアは知らなかったようだ。「ぼく自身、あるレベルの映画に出演すれば、それなりの注目を浴びるというのを経験した。だから、有名税を理解できる。順応し、できるだけポジティブになるようにするだけだよ。その点、ボビーはそういうのを学ぶ時間を持たなかったと思うんだ。しかも、非社交的で、チェスに集中していたからね」。プレミア上映の会場前に集まるファンの対応を見る限り、彼は有名税ととてもうまく渡り合っているようだった。

 ちなみに、フィッシャーは晩年、日本で生活し、同棲していた日本人女性が彼の遺産を相続した。

Special thanks to Megan Zehmer / 42 West, Gabriela Zapata / Sunshine Sachs, Margaret Gordon
 / PMK•BNC, Michele Robertson / Michele Robertson Company

この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

はせがわいずみ (Izumi Hasegawa)

はせがわいずみ (Izumi Hasegawa)

ライタープロフィール

島根県松江市出身。映画ジャーナリスト・神主。NHKなどのアナウンサーを経て、映画・TV記者に。取材したセレブはのべ5000人以上。スターのインタビューや写真を全世界の媒体に配信する通信社Hollywood News Wire Inc. を経営 (一部をWhatsUpHollywood.comに掲載。動画インタビューはUTBでも放送中!!)。ハリウッドと日本の架け橋としてHollywood-PRを立ち上げ、PR・マーケティング、コンサルタントとしても活動中。
実家が神社(出世稲荷神社)なので神主の資格を持つ。島根県ふるさと親善大使「遣島使」。著書:TV『24』公式解説本『メイキング・オブ 24-TWENTY FOUR-』(竹書房)

この著者への感想・コメントはこちらから

Name / お名前*

Email*

Comment / 本文

この著者の最新の記事

関連記事

アメリカの移民法・ビザ
アメリカから日本への帰国
アメリカのビジネス
アメリカの人材採用

注目の記事

  1. アメリカ在住者で子どもがいる方なら「イマージョンプログラム」という言葉を聞いたことがあるか...
  2. 2024年2月9日

    劣化する命、育つ命
    フローレンス 誰もが年を取る。アンチエイジングに積極的に取り組まれている方はそれなりの成果が...
  3. 長さ8キロ、幅1キロの面積を持つミグアシャ国立公園は、脊椎動物の化石が埋まった岩層を保護するために...
  4. 本稿は、特に日系企業で1年を通して米国に滞在する駐在員が連邦税務申告書「Form 1040...
  5. 私たちは習慣や文化の違いから思わぬトラブルに巻き込まれることがあり、当事務所も多種多様なお...
  6. カナダの大西洋側、ニューファンドランド島の北端に位置するランス·オー·メドー国定史跡は、ヴァイキン...
  7. 2023年12月8日

    アドベンチャー
    山の中の野花 今、私たちは歴史上経験したことのないチャレンジに遭遇している。一つは地球温暖化...
  8. 2023年12月6日

    再度、留学のススメ
    名古屋駅でホストファミリーと涙の別れ(写真提供:名古屋市) 以前に、たとえ短期であっても海外...
ページ上部へ戻る