元祖セレブを描く?!「Pawn Sacrifice」
文/はせがわいずみ(Text by Izumi Hasegawa)
- 2015年10月5日
15歳で史上最年少のチェスのグランドマスターとなったボビー・フィッシャーは、冷戦時代に世界チャンピオンのソ連を下し、アメリカ国民の英雄として時の人となった。しかし、妄想や奇行も激しく、紙袋をかぶってマスコミの前に現れたりするなど、その変人ぶりでも有名だった。
受像機の普及によりTV報道が急激に活発となった時代に有名人となったフィッシャーは、どこに行ってもマスコミに囲まれる体験をする。それはまるで今の時代、パパラッチだけでなく一般人が携帯カメラでセレブを追うのに似ている。おまけに彼も、現代のセレブ同様、奇行をする。注目を浴びると奇行をするようになるのか? それとも元来の性質なのか? はたまた、プレッシャーからか?
フィッシャーに扮したトビー・マグワイアも、映画「Spider-Man」のヒットで有名人の仲間入りを果たした。有名税と渡り合うコツやフィッシャーとの共通点を聞くと、開口一番「紙袋をかぶらなきゃ」と返ってきた。すでにシャイア・ラブーフがベルリン映画祭でやったことをマグワイアは知らなかったようだ。「ぼく自身、あるレベルの映画に出演すれば、それなりの注目を浴びるというのを経験した。だから、有名税を理解できる。順応し、できるだけポジティブになるようにするだけだよ。その点、ボビーはそういうのを学ぶ時間を持たなかったと思うんだ。しかも、非社交的で、チェスに集中していたからね」。プレミア上映の会場前に集まるファンの対応を見る限り、彼は有名税ととてもうまく渡り合っているようだった。
ちなみに、フィッシャーは晩年、日本で生活し、同棲していた日本人女性が彼の遺産を相続した。
Special thanks to Megan Zehmer / 42 West, Gabriela Zapata / Sunshine Sachs, Margaret Gordon / PMK•BNC, Michele Robertson / Michele Robertson Company
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